2001年度 事例研究委員会 まちづくりの知恵の検証 その2 |
「彦根 みわくのまちづくり」 |
事例研究委員長 正木 啓子
企画:高谷 基彦
ホームページ構成:難波 健
<検証対象>
関西支部設立10周年記念事業
「関西都市計画100年の歩みとまちづくりの知恵」
(37)み・わ・くのまちづくり
−彦根・なにか良いことありそうな予感のする街を求めて− 八若 和美
実施日:2002年1月19日(土) 集合時間:午後2時
集合場所:彦根城博物館 1階ロビー(彦根城表門の横。彦根駅から徒歩10分強)
<経路> 彦根駅正面の「駅前お城通り」をお城の方向に直進→彦根市役所を越えて護国神社の鳥居のところの交差点を左折→T字路の突き当りを右折→お堀を越えて道なりに進む→T字路を左折→すぐに見える橋(表門橋)を渡る→彦根城表門・彦根城博物館
事例研究:彦根市における『み・わ・くのまちづくり』
〜夢京橋キャッスルロードと四番町スクエアー〜
研究テーマ:中心市街地の活性化とまちづくりの知恵
見どころ・聞きどころ
@ 夢京橋キャッスルロードのまちづくりの知恵(OLD NEW TOWN)
・都市計画道路の整備を契機とした町並み再生
・住民との協働(まちなみづくり相談室)
・地区計画による町並みデザインの誘導(建築条例の知恵)
・まちづくりの総合化
A 四番町スクエア-のまちづくりの知恵
・市街地再開発事業からまちなか再生土地区画整理事業への転換
・商店街の業種構成を念頭においた飛び換地
・大学と地域との交流
・高齢化の進展を視野に入れたユニバーサルデザインのまちづくり
・住民協定による町並みの統一
・マスターアーキテクト制度の導入
B その他の中心市街地活性化の取組
講師・案内人
彦根市都市開発部都市計画課 八若主幹、寺田副主幹
行程
午後2時 彦根城博物館に集合→博物館内の講義室で概要説明を受ける→博物館見学→夢京橋キャッスルロード・四番町スクエア-の見学→時間があればその他の中心市街地活性化事業の例等を見学→現地の区画整理事務所内で意見交換会→懇親会(タストーヴィアン)
以下文責:坂井信行(アルパック)
彦根の見学会で市の八若さんに説明していただいたことなどを忘れないうちに メモにしました。 なお、夢京橋キャッスルロードなどでテナント誘致とセットで建築を設計して いると説明されていた戸所岩雄氏が主宰する計画工房のホームぺージを見 つけましたので参考までにご紹介します。 ○彦根城について ・国宝に指定されている全国の4つの城のうちの1つ。 ・世界遺産の指定を目指して周辺整備を進めている。 ○彦根市の現状と中心市街地活性化への取り組みの経緯 ・地盤はTP+98m、琵琶湖の水面+3〜4m。 ・人口は約11万7000人で、人口と世帯数は一貫して増加している。 ・約150haの中心市街地では人口が減少しており、現在は1万人弱になっている。 平成27年には5000人になると推計されている。昭和32年当時、中心市街地内の 城西小学校の児童数は200人/学年であったのが、平成10年には50〜60人/学年 になっている。これを元に戻すには50年ぐらいかかると思われる。 ・彦根城の入山者数は50〜60万人/年で、景気の動向等にも左右されず安定 している。かつては集団での来訪が多かったが、近年は個人が増えている。この 観光客を町中へと誘導することで中心市街地を活性化しようと考えた。 ・最初は夢京橋キャッスルロードの整備、次に市場商店街、最終的には銀座商 店街までつなげたい。また、これとあわせて裏町への誘導も考えている。 ・中心市街地活性化事業が制度化され全国で17番目に採択された。150haの中 の12の商店街の活性化と基盤整備をすすめている。対象エリアと期間を限定 することで集中的に整備を進めており、ほぼ完成に近づいている。 ○夢京橋キャッスルロードの整備 ・この通りは彦根城の堀にかかる京橋から出て町家へと続く軸で、3間通 りとも呼ばれていた。先代の市長(井伊直弼のひ孫)が切妻平入の町家を復元 することを思い立ち、市から地元へと働きかけた。 ・商業地域400/80の指定であるが、木造2階建てとすることを基本としている (防火、準防火地域の指定はない)。道路から1mセットバックすること、建物の 高さは12m以下とすること、やむを得ず3階建てにする場合には5m以上セットバ ックすること、屋根の勾配1/2にすることなどを決めている他、材料まで細か く指定している。これらは地区計画及び建築条例、修景基準によって定められている。 ・江戸町屋スタイルとするため黒いベンガラを使用し、色彩的にはモノトーン でまとめている。そのままでは単調になるため、隣の建物の壁とは少し角度 をつけて建物を配置(武者隠れ)することで立体感を出している。 ・道路は都市計画道路として6m弱であったものを18mに拡幅した。街路樹 にはけやきを植え、電線を地中化している。 ・イベントとしてはゆかたまつり(2万人程度)、なんでも鑑定団、大名行列 (従来は城内で行われていた)などを開催している。 ・住宅が商店に転換し、特に飲食店が増加している。地元の建築家(戸所岩 雄)がテナントの誘致も含めて設計を受託している。外から見て何の店舗かわか りにくいという声もある。実際に、当初あったガソリンスタンドは廃業 してしまった。 ・まちづくり関連のいくつかの賞を受賞したことでタウン誌などにも紹介され、 その後観光客が急増した。観光客は平成10年には45〜50万人になり、彦根城と並 ぶほどになった。 ・TCM(トラベルコスト法)による事業評価では、平成10年から29年までの20 年間に観光客による消費は54.289億円が見込めるという結果が出ており、これは 公共投資額36.2億円の1.5倍にあたる。 ○市場商店街の整備 ・もともと20坪/戸程度の木造の老朽建物が密集する地区で、道路幅も3.5mと 狭く、多くの店鋪は閉まっていた。市街地再開発事業の取り組みが17年間続 けられ準備組合もできていたが、核店鋪が撤退したため事業はなくなってしまった。 ・その後、行政に不信感をもつ若手の商店主11名が集まって木造2階建 てぐらいの自分たちの身の丈に合った再整備をしようということになった。 しかし、土地の交換にかかる税金など資金面で進展しなかった。 ・街なか再生土地区画整理事業が制度化され、これまでの区画整理事業の条件が 大幅に緩和されることになったため、組合施行で事業を行うことになった。 権利者は77名になり、市も市施行と同等程度の支援をしている。 ・集約換地によりニーズに合わせた広さの商業地区をつくり、他は住宅地区 にしている。また、リザーブ用地も用意している(民間運営の文化施設を誘致 する予定)。換地計画では業種の配置にも配慮している。 ・街全体で大正ロマンの漂うまち(瓦屋根の和風+アールデコの欧風) をめざしている。景観に関しては「まちづくり協定」でイメージを共有化し、 さらに「福祉のあるまちづくり基準」でユニバーサルデザインの基準を定 めているが、きっちりと統一するのではなく、緩やかな統一を目指している。 景観イメージは画一化されないよう、タッチの異なる複数のパースで示 している。 ・全体のデザイン調整はマスターアーキテクト(内井昭蔵)が行っている。 マスターアーキテクトは地区内の全ての建物の概略の形を決めて白い模型を 作った。この模型は実際に建物ができ上がったときに着色されたものと差し換 えられる。模型を見ながらデザインを協議している。 ・景観的にはファサード整備事業(経済産業省)による補助と、塀の整備に対 する市の単独補助(50万円)がある。ファサード整備事業は年度ごとに予算額 を決めるため、全ての敷地についての整備時期を想定している。全員飛び換地 であり、既存の建物を除却しないと別の人が新しい建物を建てられない。 このため非常に複雑なプログラムになっている。 ・地区内では20件が事業を継続し、他の店はテナント経営をすることになっている。 ・事業を固定資産税額で評価すると年間1200万円にしかならないため、 公共投資額21.5億円を回収するのに約180年かかる。売り上げ額をもとに消費税を 加算して考えると税収は年間1.6億円になって、約15年で回収できることになる。 産業連関分析によれば直接投資額に対する間接波及効果(乗数)は1.3倍 となった。 ○その他 ・銀座通りの人通りはまだまだであるが、車道を蛇行させるなどの取り組みを進 めている。 ・表通りから裏通りへと人の流れを誘導していくため、まち並み・まちづくり 総合支援事業で面的に整備している。 ・あくまでも居住者である市民の利益が第一である。居住者を増やすために 観光で魅力付けをしている。人口を回復させるためには住宅政策も合わせて必要 であるが十分ではない。特優賃がある程度。 文責:坂井信行(アルパック) |
[事例研トップに戻る] |
Copyright(C)1999-2001 (社)日本都市計画学会関西支部 |