事例研究委員報告

「変容する住宅地」−近隣住区の展開ー

坂井 信行(地域計画建築研究所)


『千里ニュータウンのまちなみ』
 千里ニュータウンの市街地は道路、公園、緑地など基盤施設の整備水準はもとより、公的団地などでの統一された(単調な)まちなみなど、(善し悪しは別としても)一般の市街地とは一線を画していることは一目瞭然である。近隣住区理論の展開の場として壮大な実験が繰り広げられ、以降の我が国の住宅地開発に多大な影響を与えたことはいうまでもない。20世紀の大いなる遺産である。


ニュータウン展望台(千里中央公園内)からの眺め(吹田市古江台方面)

『フットパスとクルドサック』
 当時、先進的な試みであったフットパス(歩行者専用道路)とクルドサック(袋小路)の現状を案内してもらった。アメリカなどのクルドサックに比べれば道路位置指定の延長に過ぎないといえなくもないが、邸宅の専用道路という感じの街なみで落ち着いた雰囲気をつくっており、当初の計画意図は一定の効果をあげている。クルドサックに面した住宅には泥棒が入りやすいという話もあった(ただし、たまたま話を聞いた住民はこれまで一度も空巣に入られたことはないと話してくれた)。


フットパス


クルドサック

『敷地の細分化』
 戸建て住宅地区では敷地の細分化が進んでいるという。新住宅市街地開発法では宅地規模は210F(約64坪)が基準で10年間の転売禁止があったが、中には100坪の分譲もあったと聞く。相続を機に敷地が分割される例が多いらしいが、もとの敷地が大きいため2分割程度でもそこそこの大きさはある。


2つに分割された敷地

『集合住宅の建て替え』
 藤白台では市街地再開発事業により中層(5階建て)の近隣センターへと更新が進んでいるのに対し、旧新千里西町K−A団地(公社分譲)では150戸の中層住宅団地を全員合意で263戸の高層住宅に建て替えられた。新聞でも取り上げられ全国的にも有名になっている。
周辺は低層の戸建地区であり、中層の集合住宅地区とでは住環境の捉え方に違いがある。K−A団地のごく近所でニュータウンに隣接した高層マンション建設に対して、ニュ−タウン内の戸建住宅地にマンション反対の看板が立てられていた。


高層住宅に建て替えられたK−A団地

『社宅のマンション化』
 企業分譲により社宅が建っていたところがマンションに建て替わり、一般に分譲されているものが多いという。高級感のあるマンションに生まれ変わっており、環境的には問題は無さそうであるが、一部の戸建て住民からは反対の声もあるらしい。
また、社宅のマンション化は企業にとっては土地代のいらない「おいしい」不動産開発事業である。時代の変化にともなってやむを得ずということであろうが、企業分譲の当初の主旨を考えると気持ちは複雑である。


社宅が分譲マンションに建て替えられた例

『新たな展開に向けて』
 市民のライフスタイルは自動車の利用を前提としたものとなり、買い物はいわゆるロードサイド型のショッピングセンターが利用される。しかし、一方では交通弱者である高齢者が不便な生活をしいられていることも事実であり、特に人口構成がアンバランスな千里ニュータウンでは深刻である。このような状況の中で、新千里東町での「歩いて暮らせるまちづくり」など新たな取り組みも一部では進められてきている。
 従来の計画の枠組みを踏襲して住宅以外の機能はセンター地区に集中させるのか、あるいは住宅と居住関連のサービス機能が共存する(混在する)環境をつくっていくのか、難しい問題である。少なくともプランニングされつくした市街地ではなく、少しは「遊び」や「余白」といった部分がほしいところである。
 いづれにしても市街地の将来像についての議論が大いに必要であろう。どんなライフスタイルの人がどういう生活を送るのか。その上で都市計画としてどういう対応が必要になるのか、またまとまった規模をもつ公的団地の建て替えがどういう形で寄与できるのかが議論されなければならない。


 千里ニュータウンはこれからどんな道を歩むのか・・・


府営住宅の典型的なファサード


お洒落な民間マンション


切り取りによる近隣センターの部分建て替え


こども達の夢はふくらむ

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