事例研究委員報告
「近隣センターの今」
高谷 基彦(京都市)

『はじめに』

 計画的に配置され、近隣住民の日常生活の中心となる施設として計画された近隣センターは、開発から数10年が経過して、当初の姿とは大きく変容しつつある。今回の千里ニュータウンの現地見学でいくつかの近隣センターを視察したが、空き店舗も見れら、土曜の午後にもかかわらず、人も少なく、見た限りでは活気がないようである。ここでは、このような近隣センター問題について、若干考えて見たい。

『千里ニュータウンにおける近隣センターの状況』
・ 新千里西町近隣センター 
 千里中央の西側に位置する新千里西町近隣センターでは、センター敷地のおよそ半分が真新しい高層共同住宅に建て替えられ、その低層部に中規模の商業施設床が用意されているが、現時点ではテナントは未入居の状況である。センター敷地の残りの部分には従来からの専門店街が残っているが、空き店舗もあるようであまり活気が感じられない。



・新千里北町近隣センター
 千里中央の北側に位置する新千里北町近隣センターでは、従来の専門店街の一部が既に小規模な店舗付き共同住宅に建て替えられているが、従来の中規模商業施設は閉店したままである。



・新千里東町近隣センター
 千里中央の東側に位置する新千里東町近隣センターでは、従来からの中規模商業施設や専門店街が営業を続けているが、専門店街にはシャッターが閉じられた空き店舗がいくつかある。この近隣センターは広幅員道路に面せず住宅街区に囲まれた位置にあるため、商業施設の立地条件としては必ずしも良好な条件にあるとはいえず、苦戦しているようである。
 一方、この近隣センターでは、建設省(現国土交通省)の『歩いて暮らせるまちづくり事業』の地区指定を受け、近隣センター内の空き店舗の一つを改造し近隣住民のコミュニティプラザとして活用されており、近隣センターの再生に向けた新たな展開を模索する動きがみられる。



・藤白台近隣センター
 北千里駅の東側に位置する藤白台近隣センターでは、商業施設の老朽化や店舗の閉店などにより、組合施行の第1種市街地再開発事業と地区計画制度を活用し、商業施設、公益施設(デイケア施設等)と共同住宅とにより構成される再開発ビルの建設途上にある。



『近隣センター問題の要因と課題』
・モータリゼーションの進展と商業構造の変化
 計画当初においては、近隣住民の日常生活は多くは徒歩や自転車等を中心に考えられていたと思うが、当時の予想をはるかに超えるモータリゼーションの進展により、郊外の幹線道路沿道に大規模なショッピングセンターやロードサイドショップ等の立地が進み、住民の消費ニーズの変化とあいまって、近隣センターの不振の要因となったと考えられる。
 数10年が経過した千里ニュータウンをはじめ、初期に整備されたニュータウンでは居住者の高齢化が進みつつあるが、モータリゼーションの対極に位置する高齢者の日常生活を視野に入れると、今後も近隣センターの果たす役割は少なくない。新千里東町近隣センターのように、「歩いて暮らせるまちづくり」の取組など、地域コミュニティや高齢者福祉も視野に入れた商業活動、商業空間の再生が求められる。
 
『分譲方式による商業運営の硬直化』
 千里ニュータウンの近隣センターは、土地・建物を個々の商業者に分譲したため、消費者ニーズの変化に機敏に対応した商業運営がしづらく、また空き店舗が生じた場合でも柔軟な対応がなかなかできない。
 このことは近隣センター問題だけに限らず、広く中心市街地問題についても同様のことがいえるが、にぎわいのある商店街を維持・発展させるためには、空き店舗の発生や消費者ニーズの変化に対して柔軟かつ機敏に対応できるシステムが必要である。そのためには、これまでの分譲方式ではなく、土地・建物の所有と商業施設の運営(営業)との分離やTMOの導入などに取り組む必要があると考える。

『むすび』
 ニュータウン(計画的住宅市街地)における近隣センター問題は、何も千里ニュータウンだけの問題ではない。京都市が西京区に整備した洛西ニュータウンにおいても4つのサブセンターがあるが、ここでもキー店舗の閉鎖や個店の空き店舗化が進行しつつある。
 千里中央のすぐ北側に、高知県から直送された食品類を販売する「とさ千里」という店舗がオープンしている。そこそこ繁盛しているとのことだが、この店舗の用地は当初の計画では商業用地ではなく、公的機関の所有地であったという。当初の計画原理が変更された訳であるが、その経緯はともあれ、こういった柔軟な発想も今後重要になるのではないか。

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