2002年度 公開事例研究会 まちづくりの知恵の検証 その3
<ルール化されない都市のよさ 大阪編>
《***阿倍野再開発・鶴橋・コリアタウン***》
■主旨 都市の衰退、近畿の地位低下などに対処する市街地の活性化への道をさぐるため、整然とした都市再開発が積み残した課題と対象的なルール化されない都市のよさの事例を見学して21世紀の都市づくりを考える。
事例研究委員長 難 波 健
■見学行程
2002年11月9日(土)
◇13:00 阿倍野Hoop広場前集合
◇13:15〜13:30阿倍野再開発の概要説明
◇13:30〜14:30再開発及び周辺見学
◇14:30〜14:45天王寺から鶴橋へ移動
◇14:45〜15:00鶴橋付近の概要説明
◇15:00〜16:30鶴橋からコリアタウンにかけて見学
◇17:00〜 意見交換会(吉田)
◆阿倍野地区
◇阿倍野筋一丁目<巨大な再開発>
◇阿倍野筋二丁目<再生の種地としての空地>
◇松崎町三丁目<閑静な住宅地区>
◇阿倍野筋三丁目<長屋の残る地区>
◇旭町二丁目<都市再生進行中
◇阿倍野筋一丁目<再開発進行中>
◆あべのマルシェは、構造的には軸線と商店を残して再開発がされているのだが、手放しで成功とは言えないように思われた。
◆鶴橋・コリアタウン
□まち歩きの行程
環状線鶴橋駅
⇒<東成区>鶴橋商店街振興組合・丸小鶴橋市場商店街振興組合(特色ある商店街)⇒本通商店街(活気みなぎる一帯)
⇒<生野区>鶴橋卸売市場(老朽化が進む)
⇒本町通り(活気ある一帯)
⇒学校通り(住宅ゾーン)⇒柳通り⇒難波方江線横断
⇒本通り(活気のなくなった一帯)
⇒生野コリアタウン(御幸通り商店街)
□鶴橋の活気
東西に近鉄大阪線・奈良線が走り、南北にJR環状線が通る「鶴橋駅周辺」の印象を掲げると次のようになる。
・非常にわかりにくい(どこを歩いているのかわからなくなる)
・朝鮮半島の生活品が目につく(衣料品など、全国の卸機能がある)
・朝鮮半島の食物が豊富(キムチ、チジミ、コチジャンなど)
・下町の居住地がある(風呂屋が機能している)
とにかくカスバのような迷路と雑踏の印象が強いまちである。
環境開発研究所におられた有光友興氏に再開発の状況などのお話を伺い、この地区について、以下のような状況にあるとのことであった。
・北の東成区、南の生野区、西の天王寺区が複雑にからみあっていること
・元気に見える卸商店街も地区の居住者がいないために衰退傾向にあること
H13.3に生野区側では再開発のまちづくり構想が立案されて公表され、次のステップに進もうとしているのに対し、東成区側では素案を公表し、それに対する意見の募集を呼びかけている段階にあるとのことである。
今回のまち歩きでは、こういった再開発は意識せずに歩いたのだが、商業ゾーンの中心の本通り商店街は北から南にいくほど、だんだん寂れていることは感じられた。 本通り西側の住宅ゾーンにも歩みを入れたが、これは古き良き下町の風情が残っているように思われた。
7月に、防災まちづくりのケーススタディとして東京都の荒川区町屋を防災の目で見学したのだが、防災上危ないと言われるまちも住むには心地よさそうな印象を受けた。鶴橋の住宅ゾーンも同様に、マンション化せずに住みやすさを残しながら街の改造をするような工夫はないものだろうか。
□国際商店街 御幸通コリアタウン
本通り商店街が、300mほど4車線となっている難波片江線を南に超え、閑散とした商店街を約200m南下して、東の御幸森天神社の方向に折れると御幸通・コリアタウンに入る。
東西に門があり、道幅も広い明るい雰囲気の通りであった。人通りもそこそこあり、折しも夕方の買い物時で、我々の中にもチジミ、キムチなどの食材を購入する人がいた。
![]() |
![]() |
![]() |
◆明くる10日に御幸通商店街一帯で「2002年統一祭りin生野コリアタウン」が開かれるということを知ったが、10日の夕方のテレビニュースで民族伝統婚礼式の模様が放映されていた。 |
|
◆また、商店街ごとに一つの外国を決め、観光や文化の紹介、スポーツ大会での応援を行う「一商店街・一国応援運動」でコリア(大韓民国/朝鮮民主主義人民共和国)を積極的に支援し、商店街の国際化を図っているということであった。 |
□ ルール化されない都市のよさ
コリアタウンから来た道を引き返し、鶴橋駅に再集合し、希望者で交歓会を行った。
参会された方々からは、「鶴橋は、何か機会がなければ歩けないのでよかった」とか、「関西の地理感がないので見学できてよかった」など、まち歩きに対する好意的な意見が多かった。
今回の企画のポイントである「ルール化されない都市のよさ」について個人的な印象を述べると、阿倍野の巨大な再開発は、都市の財産として都市再生の目玉となろうとしているが、その周りには新世界、飛田新地といった手つかず(手をつけられない?)都市空間があり、これらを都市の負の遺産ではなく、財産に変える工夫が求められているのではないか。
あべのマルシェは、構造的には軸線と商店を残して再開発がされているのだが、決して成功とは言えないように思われた。
むしろ、ささやかなではあるがコリアタウンのさわやかな活気とあかるさは印象的であった。
混沌のまち鶴橋がどのように生まれ変わるか、良さを残しながら造り変える手法も含めた再開発を期待したい。
□ 鶴橋地区まちづくりの経緯
S20 近鉄ガード下を中心に闇市発生
S33 鶴橋卸売市場 鉄骨造で建設
S43 鶴橋地区再開発協議会設立
S46 鶴橋地区再開発基本計画発表 生野・天王寺・東成3区連絡会発足
H 8 「住んでよかった鶴橋」まちづくり研究会発起人会
H10.1 大阪市まちづくり支援制度適用第1号 以後、アドバイザー・コンサルタント派遣
H11.5 再開発分科会設置
H13.3 フレッシュ鶴橋まちづくり研究会(生野区)「まちづくり構想」策定
H14.3 鶴橋地区まちづくり研究会(東成区)「まちづくり構想(素案)」発表
■ 参加者(50音順)
天野 哲夫 (株)アルプ
佐々木 礼子 (有)IDP
石 京 (株)地域未来研究所
杉本 哲雄 (株)まちづくりシステム
寿崎 かすみ 龍谷大学
張 志偉 流通科学大学
西岡 正次 豊中市政策推進部企画調整室
山崎 央夫 大阪府建築都市部総合計画課
山下 圭一郎 大阪産業大学(学生)
(委員会関係者)
池田 順一 (財)大阪市都市工学情報センター
梶山 善弘 大阪府企業局宅地室 水と緑の健康都市建設課
難波 健
兵庫県県土整備部まちづくり局都市計画課
南 健志 大阪府建築都市部 総合計画課