2003年度 事例研究委員会 公開事例研究会報告             
                  (文責:株式会社地域未来研究所 樋口清士)             

『まちの活性化は関西を変えるか!』


 都市の活性化、関西の地位向上は火急の課題である。
 都市計画の面からのアプローチとして、住宅については都心居住、郊外居住(開発)のアンバランスは先行きがみえない状況にあり、産業については、企業の東京移転、海外転出に歯止めがかからない状況である。
 われわれのスタンスを産業、居住と遊の複合的展開に置いて、まちの活性化を情報発信している空間とソフトのつながりを研究し、発信することにより、関西活性化に向けた情報のひとつとして取り上げる試みを実施した。



○日程/2003年11月15日(土) 14:00〜

○会場/都市工学情報センター(OCT4F)

○プログラム/司会・主旨説明 難 波  健(事例研究委員長)

14:00〜  開会(主旨説明)

◇話題提供「淀屋橋ウエスト」
         澤田  充(ケイオス 代表取締役)

◇事例紹介「空堀商店街界隈」
         寿崎 かすみ(龍谷大学):事例研究委員会委員

◇事例紹介「堀江・立花通り」
         田中みさ子(大阪産業大学):事例研究委員会委員

16:00〜 

◇まち歩き:堀江・立花通り界隈

◇交歓会/華椿(北堀江)

 聞き及ぶ東京の建設ラッシュに対し、関西でも都市再生と銘打って高容積の都市改造に追随する“都市づくり”が進められている。しかし、容積緩和の都市の器づくりは本当に関西を救うのだろうか。容積がなくてもいきいきしたまちの活性化の状況を知り、空間とソフトのつながりに目を向けて、21世紀型の都市のつくり方を学び、その情報を発信して今後の都市づくりへの糧とすることを企画した。

 淀屋橋ウエスト

▽エリアとして開発

業務ビルの1階の空きスペースに商業テナントを入れる話が起こったが、人が歩いていないことが問題。ひとつのエリアとして開発することにより、テナント誘致を促すことを目的として淀屋橋WESTを提案。

▽街のブランディング

このエリアは大阪市のビジネス街の中心である淀屋橋の南西部に当たり、ここにひとつのブランドを感じさせるものを誘致し、コンサバティブなステイタスが似合うまちをつくることを目指す。

▽まちの特徴

・現状では、「大企業が多い(しかし本店機能の東京流出)」、「街区が整備されている」、「歴史的建築物が多い」、「老舗小売店が多い」が特徴。

・マーケティングの観点からは、「良質のストック」、「上質の生活者」、「プライドの高いビルオーナー」、「時代に遅れた街」が特徴。

▽ストックの活用

淀屋橋はまちのかたちが大きく変化しておらず、過去を辿りやすいまち。土地が持っているものを21世紀に活かすため、できるだけ大正・昭和時代の建物の風格を活かすため、コンバージョンを中心に展開。

▽共感者とともに

現在は推進のための組織はなく共感者と一緒に取り組み中。上位概念だけでは進まないので、まず実行していくことが大切。しかし、次のステージでは組織化は必要。

▽まちづくりのアイデア

・コストをかければ付加価値が高まるとはかぎらない。

・まちのブランドはどんな人が集まるかで決まる。物販、ホテル、住宅などが必要。

・ブランドづくりには"こだわりが"必要。皮膚感覚で感じられる安心感がブランド。

・緑を増やすなどオフィス街としての底上げが必要。

・人が住む、人が歩くことで、まちに手入れがゆきとどき、安心感が生まれる。

・「容積率一杯」は回収スピードが必要になりまち自体が消費されていく。

・情報開示しながら、みんなの意見を聞きながらスローなまちづくりをしたい。

聞きしに勝る「コーディネートの進むまち」の印象を持った。企業のまち淀屋橋にうるおいの食事空間を提供していくプロセスは、まさに仕掛け人の世界である。澤田氏には、交歓会までおつきあいいただき、様々な仕掛けの極意をお話いただいたが、なかなか真似のできるポジションとは思えない。今、都市再生に最も求められているポジションであり、こういった方が居られるということは、関西のまちづくりへの大きな灯りと言える。(委員長談)

 空堀商店街界隈

▽まちの特徴

・大阪市の中心部に残った住商混在地域(戦災で焼け残った地域)。

・長屋と路地が残るまちなみ。

・商業が不振で、活性化を課題とする延長約800mの商店街。

▽外者を中心とした活動

当地域の町家に住み着いた六波羅真建築研究室が中心となって「からほり倶楽部」を組織し、「空堀商店街界隈長屋再生プロジェクト」に取り組んでいる。

▽惣と練

2002年7月に長屋再生プロジェクト第1号の複合ショップ「惣」が、続いて2003年2月に第2号の複合ショップ「練」がオープンした。「惣」は長屋を「練」は大正時代に移築された宮家の御屋敷を改修・再生したもの。

▽からほりアートイベント

地域の人に地元の良さを見直してもらうことを目的に、「からほりアートイベント」を2000年から毎年10月に開催。芸術系大学の学生等がまちなかや家先などに作品を展示。「からほり倶楽部」が中心となり外部のボランティアにより運営。

▽広報

雑誌、ラジオ、テレビ、新聞、ホームページなど多様なメディアを活用して紹介。テナント募集、イベントスタッフの募集にホームページを活用。

▽からほり倶楽部の課題

・町家再生のスタッフ、イベントスタッフ等を繋ぎ組織化。

・地元との関係づくり。(地元住民の考えは様々。人が来ることを良しとしない人もいる。)

・路地や長屋等の地域資源を生かし、人が住み、商店街に人が流れるまちづくり。

今や伝説的に有名になっている悠、練をコーディネートされている六波羅さんの名が紹介された。また、「からほりまちアート」など、外からやってきた方々がまちの活性化に取り組んでおられる紹介があった。(委員長談)

 堀江・立花通り

▽まちの履歴

・1698年に長堀掘削。土佐藩の蔵屋敷が立ち、材木や鰹節の集荷地となる。

・明治から昭和にかけて家具のまちを形成。戦災で焼失。

・高度成長期に家具・材木店の廃業により衰退。

・バブル崩壊後、アメリカ村の治安悪化と客の若年化に伴い、店舗が流入・立地。(家具店によるアパレルへの店舗貸しが見られる。)

▽まちの特色

「道路に囲まれた地区」、「難波、心斎橋の徒歩圏」、「閑静な住宅地」、「低家賃で利用しやすい天井の高い材木倉庫跡」、「既存建物のリユースによる個性的、穴場的な店舗」、「進みつつある地区のブランド化」などが特徴。

▽まちの動き

・経営的に厳しい家具店がアパレル系の店舗へと転換しつつあり、自然発生的にまちの姿を変えてきている。(家具店が並ぶ通りにアパレルショップ、小物屋、飲食店等が点在。)

・男の子が歩くまちになっている。

・東京資本の店舗が出展し、雑誌にも掲載されまちのイメージができつつある。(四国辺りからの客も見られる。)

▽まちのポテンシャル

「集客エリアに近い」、「地価が安い」、「大規模施設が無く若者にとってイメージのない無色なエリア」、「空間的にポテンシャルのある建物が点在」、「履歴の混在によるミスマッチのおもしろさ」、「地元からの情報発信」といった点が今のまちの変化に繋がっている。

▽地元の動き

・「堀江アパートメント」が地元有志による情報発信基地として活動。

・まちづくり組織「堀江ユニオン」が結成。

・大正初期に立てられた旧変電所の保存運動が展開。

▽現状の問題・課題

・ブランド化により家賃が高くなりつつある。

・若者の増加に伴う老舗店舗が撤退するとともに、雰囲気が悪化してきている。

・東京資本による店舗は撤退が早く、入れ替わりが早い。

・地区イメージに合わない店舗が進出してきた。

会場のOCATの北に湊町リバープレイスができている。立花通はその北に東西に通る家具のまちとして有名な通りであり、このあたり一帯が堀江と呼ばれている。家具、仏壇、ファッションと、店々が個性を発揮しながら連帯しているように観えた。特に、男の若者のファッショングッズが特徴的だそうだ。 ここにも、堀江ユニオンカウンター、堀江アパートメントという地域コーディネート組織がある。倉庫の2階、3階、4階と、エレベーターもない上階にファッション店舗が立地していた。(委員長談)

 委員長総括

  • お話いただいた3人は共通して、地区の歴史を述べられた。淀屋や蔵屋敷の立地から住友村と言われた淀屋橋界隈、戦前長屋が残った空堀、木材問屋が多かった堀江と、地域の発展には、突飛なアイディアより、じっくり醸成されてきた土地のトレンドを大切にすることが重要で、それが活性化の源となるのではないであろうか。
  • 交歓会は北堀江の創作鮨店で開催されたが、こういった店があちこちに立地している。宴会向けというより、2〜3人で夕食を楽しむような雰囲気のある店である。この店は6時から朝の5時まで開いているという。
  • 最後に、交歓会に出席された15名の方々が今回の公開事例研で感じたことをキーワードとして挙げられたフレーズを紹介しておく。このフレーズがどういった背景のもとに発されたかを、現場を観て、聴いて、感じていただくことをもって事例研究委員会の成果の情報発信としたい。

『ブランディングのTPO』(梶山 善弘・大阪府)

『客観性』(澤田 充・潟Pイオス)

『都市再生』(前川 知史・りそな総合研究所)

『もうしわけございません』(河端秀直・鞄建設計)

『マーケティング』(高田 剛司・アルパック)

『社会基盤整備』(合田 仁・兵庫県)

『コンバージョン』(高谷 基彦・京都市)

『パラダイム変換』(南 健志・大阪府)

『なにわらしさ』(佐々木 礼子・(有)アイ.ディー.ピー)

『学生のマーケティング』(寿崎かすみ+たみ・龍谷大学)

『足元が大事』(樋口 清士・樺n域未来研究所)

『男の子のまちをつくろう』(田中みさ子・大阪産業大学)

『不屈の闘志』(松村暢彦・大阪大学)

『人のネットワーク』(難波 健・兵庫県)



まち歩き−堀江・立花通り


▲立花通り商店街のゲート・通りには昔ながらの家具店が並ぶ


▲倉庫を活用した店舗があちこちに見られる。


▲商業利用により業務ビルや町家が再生されてきた。


▲情報発信基地「堀江アパートメント」

▲食べて、飲んで、夜に楽しめるまち。



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