(社)日本都市計画学会 関西支部 都市計画研究会
「大阪中心部における「みんなの場所」の現象学的考察」
中間報告

平成16年2月6日

研究会代表:林田大作(大阪大学大学院 博士後期課程)


研究計画(平成15年4月24日 都市計画学会関西支部総会にて報告済)
  初年度(平成14年11月〜平成15年9月)
   :文献・既往研究レビュー、フィールドサーベイ、リスト・データシート作成、考察指標の練成
  2年目(平成15年10月〜平成16年8月)
   :考察・分析、都市計画上の知見の抽出、まとめ

■初年度は、上記研究計画に沿って、以下の作業を行いました。
@ 文献・既往研究レビュー
  ・ 大阪中心部に限らず、1990年代以降、都市空間や建築空間を対象として、「みんな」「公共性」「オープンスペース」「パブリックスペース」がどのように語られ、研究されてきたか、幅広く資料を収集し、レビューを行った。また、大阪中心部の歴史的変遷を文献にて調査し、大阪中心部のパブリック・ヒストリーをまとめた。
  ・ レビューした主な研究・著作は以下の通り。
     伊東豊雄、山本理顕、長谷川逸子、妹島和世、青木淳、阿部仁史などの建築家の公共性・公共空間に関する言説。
     鳴海邦碩、松隈洋、久隆浩、北原啓司、小野田泰明などの建築計画・都市計画研究者の研究。
     宇沢弘文、齋藤純一、間宮陽介、阿部潔、R・セネット、H・アレント、J・ハーバマスなどの経済学・社会学者の研究。
     木田元などの哲学者による現象学の研究。
     磯村英一、奥田道大、若林幹夫、吉原直樹、高橋勇悦、町村敬志、西澤晃彦、C・S・フィッシャー、R・オルデンバーグなどの都市社会学者の研究。
     D・ハイデン、Y・F・トゥアン、D・カンター、E・レルフ、中村雄ニ郎などの場所論。

A 調査(1)
  ・ 大阪圏(大阪府・京都府・兵庫県・奈良県)に居住・勤務する若年オフィスワーカー(22歳〜40歳、47名)に対する「居心地の良い場所」「居心地の悪い場所」の調査を行った。

B 調査(2)
  ・ 大阪圏に存する大学のうち、大阪大学、摂南大学、神戸芸術工科大学を選定し、同大学3年生(20・21歳、425名)に対する「いい感じの場所(場面)」の調査を行った。

C リスト・データシートの作成
  ・ 上記調査(1)(2)に関して、それぞれの場所のデータシートを作成し、大阪中心部に位置する場所、それ以外に位置する場所のリスト化を行った。
  ・ リスト・データシートは、その場所を選んだ調査協力者の属性(年齢・性別・居住地・勤務先・通学先など)が明らかとなるよう配慮し、さらに、理由・頻度・滞在時間・同伴者・きっかけ・使いこなしなどの視点から場所を一体的に分析できるよう、工夫を行った。

D 分析、および課題・方向性の抽出
  ・ 調査では、多くの「居心地の良い場所」「いい感じの場所」が収集されたが、大阪中心部に限って見れば、「中ノ島」「淀川」「南港」などの水辺、「法善寺横町」「大阪城」などの歴史的景観、「鶴見緑地」などの公園にその多くが集中しており、「日常的な生活の場」は必ずしも「居心地の良い場所」「いい感じの場所」となっていないという結果を得た。反面、「居心地の悪い場所」として、日常使う駅や通勤・通学路などが挙げられ、その理由も「わかりにくい」「居る人のマナーが悪い」などとなり、「日常的な生活の場」の質的な改善・向上が求められているとの結果を得た。この点は、公共空間を「みんなの場所」と感じられるかという、「みんなの場所」の成立性の問題とも絡むと考えられる。
  ・ 大阪中心部の中で、「梅田駅周辺」は、オープンスペース、パブリックスペースとしての可能性を認めることが出来た。都市的アメニティが集積し、高度な都市整備が行われている成果と見ることができ、その場所に居る「他者」への関心も高く、代表的な大阪中心部の「みんなの場所」と言うことが出来る。
  ・ 大阪中心部においては、「居心地の良い場所」「いい感じの場所」は少ないという結果を得たが、調査(1)では大阪中心部に職場を持つオフィスワーカーも多数調査に協力して頂いた。これらの調査協力者に限定して見ると、「日常の生活の場」である職場周囲に、なんとかしてすこしでも「居心地の良い場所」を見つけて使いこなす行動が認められる。このような場所はオフィスワーカーにとって、自宅でも職場でもない「第3の場所」=「サードプレイス」と位置付けられ、そのような場所を必要としているからこそ積極的に「場所構築」するという仮説が導かれる。


■次年度は、初年度の作業に基づき、以下の作業を行う予定です。
@ 大阪中心部に職場を持つオフィスワーカーのサードプレイスの調査・考察
  ・ 初年度の調査(1)により、大阪中心部に職場を持つオフィスワーカーは、「日常的な生活の場」である職場周囲に、「サードプレイス」を構築し、日常生活の質を自ら高めているのではないかという仮説が導かれた。
  ・ 本調査、および考察により、上記の仮説の立証を目指し、具体的な「サードプレイス」における人間−環境関係を現象学的に把握する。
  ・ また、初年度の調査(1)(2)や文献・既往研究のレビューとの比較を行い、大阪中心部の「みんなの場所」の成立要因を探る。

A 大阪中心部の「パブリックシーン」の考察
  ・ 初年度に行った文献・既往研究のレビューから導かれる「みんな」「公共性」「公共空間」の意味の領域に留意しながら、どのような場所、場面、空間が「みんなの場所」と言えるのかを考察する。
  ・ 初年度に蓄積したリスト・データシートを考察対象とする。
  ・ 大阪中心部における水辺や歴史的景観、公園などがどの程度「みんなの場所」として機能しているのか、その場所、場面、空間に実際に居る人を評価指標として、再調査・再考察を行う。

B 世代間に見る大阪中心部の「みんなの場所」の調査・考察
  ・ 初年度は、若年オフィスワーカー(22歳〜40歳)および大学3年生(20・21歳)を対象として調査を行ったが、それ以外の世代を対象とした調査は行えなかった。そこで次年度は高校生以下(小学生〜高校生)、および壮年オフィスワーカー(40歳〜60歳)・高齢者(60歳以上)の方にも調査を依頼し、想起される「みんなの場所」の世代間の差異を明らかにする。
  ・ 90年代後半以降、急激に生活空間に侵入してきたインターネットの「サイト」がどの程度「みんなの場所」の議論に結びつくのか、特に若年層の回答に着目して検証する。

C 総括
  ・ 限られた調査対象ではあるが、その範囲において「大阪中心部におけるみんなの場所」を具体的に挙げ、その特徴を論じる。
  ・ 本研究の調査・考察によって得た知見と、大阪中心部の都市計画との関連を論じる。
  ・ 大阪中心部の歴史的変遷を参照し、現時点で求められる「みんなの場所」の姿を提案する。

以上



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