2003年度 関西まちづくり賞の選考にあたって(講評)


1.授賞者について
 2003年度の関西まちづくり賞は、
業績名:社会実験『リバーカフェSUNSET37』
授賞者:都市大阪創生研究会 IKINA水辺チーム
      飯田 忠篤(近鉄不動産株式会社)
      泉 英明 (株式会社環境整備センター)
      高見 恒祐 (株式会社IAO竹田設計)
      田中 利光(財団法人大阪市都市工学情報センター)
      宮本 圭太郎(京阪電気鉄道株式会社)
      森山 秀二(株式会社IAO竹田設計)
      湯谷 里恵(近鉄不動産株式会社)
  とする。

2.選考にあたっての考え方(講評)
(1)関西のまちづくりを取り巻く環境と、関西まちづくり賞の応募状況について
 昨今の公共事業の大幅な縮減、デフレ経済の急速な進行に、少子高齢化、IT化、国際化などの潮流も加わり、社会経済の構造が大きく変貌する環境の中で、関西のまちづくりは、これまで主流を占めてきた基盤施設整備やプロジェクト中心のハード面の取組みが、主たる取組みにはなりにくい状況となってきている。
 一方で、生活を中心とする、まちづくりの各場面において、どのようなモノ(ハード)を造るかだけではなく、造ったモノをもとに、人々がどのような活動を行うのか、また、どう、それを旨く使うのかまで、きちっとと決めておく、いわゆる「ソフトの取組み」の重要性が、以前にも増して高まっている。しかしながら、これらソフトの取り組みについては、「どのような手法で行えばよいのか」の方法論や、「どのような成果が得られるとよいのか」との評価法について、確立されていない状況にある。
 以上のような状況と、関西自体の元気のなさを反映してか、本年度の「関西まちづくり賞」への応募は、先述の授賞事業の1件にとどまった。

(2)選考経緯について
 まず、選考にあたり昨年までの視点とした2点、すなわち、「まちづくりに対する今までにない視点の取組みであること」と、「まちづくりとしての先例・先導の役割を果たしていること」とを、引続き継承することを前提に、今回の1件の応募事業に対して、「本事業のどの部分が、選考の可否にかかる評価の対象であるか」について、各側面からの議論を行った。
 一番目の論点としては、今回の事業が「社会実験」であるということであった。
社会実験は、「今までにない」という点で、授賞の評価の対象とはなるものの、実験の名のとおり試行錯誤の部分を含んでいることで、成功事項のみならず、改良すべき事項や、以後、実施すべきでない事項なども、少なからず含んでいる。このため、賞の授与として、この点を、どの程度評価すべきかについて議論があった。
 また、次に、「波及性」という点では、本事業が「社会実験」であるが故に、ある地区での一つの事業の実施というだけにとどまらず、これをきっかけに、大都市の河川管理の変革への起爆剤となること、例えば、河川管理者側での新しい管理ルールの制定につながってこそ、社会実験としての意義が認められるのではないかとの議論がなされた。
 すなわち、今回のような社会実験は最初の取組みであるが故に、後に改良・改善された取り組みや、また、もっと現行ルールの改定に直接つながるような取組みが、後日出現する可能性があるだけに、ある意味で道半ばに過ぎない現時点での評価には困難を伴った。
 また、『カフェ』であることについても議論がなされた。
今回の取組みが、マスコミでも数多く取り上げられるなど、話題となったことには高い評価を与えうるが、一般に、水上での飲食空間だけをとらまえれば、現行でも海上での「船上レストランの設置」や、河川での「飲食可能な遊覧船の運航」などの商業利用としては、すでに古くからあるものである。その点で、台船上でカフェを設置した今回の取組みのどの部分に、新規創造性(オリジナリティー)や先導性を見出すのか、ということで議論があった。
 また、今回、河川内の公共空間で『カフェ』という商業利用を行ったことについては、将来の河川水面上で、これをどの程度進めるべきかが確立されていない現状で、
この取り組みの、「どの部分を評価するのか」についても議論がなされた。

(3)選考理由について
 以上のような議論のもと、本件に対する授賞については、各委員それぞれにおいても是と非の両面の意見を有する状況ではあったが、最終的に各委員の意見を集約した結果、以下の点を積極的に評価し、本事業を「2003年度の関西まちづくり賞」に選考することを、結論づけたところである。
@ 本事業の「社会実験」としての評価については、本委員会としては、「試行錯誤」という未完成な要素は含んでいるものの、「誰もが思ってはいても、実際には困難な事柄を最初に実施した。」ことをプラス要素として、奨励的な意味合いも含め、最大限積極的に評価することとした。実際、2004年3月に、大川右岸(天満橋付近)においても他の団体により、同種の取組みが行われたことは、本事業の先導性という点が発揮されたといえる。その意味で、今後、積極的に利用がなされるであろう、河川利用のシンボルとしての意味での授賞と考えている。
A 利用内容については、商業利用としての『カフェ』自体を直接的に評価したのではなく、本事業の実施が、これまで自然公物として規制色の強い河川の利用の突破口となったこと、すなわち大阪の都市の重要な河川空間の一部を、市民に開放したことを積極的に評価することとした。その際、『カフェ』はいくつかある河川開放の一つの例示的形態として捉えることとした。すなわち、河川管理者に対する占用・使用をはじめとする、行政的な手続き等での、水辺の利・活用に関する各種のHOW TOが明確となったことなどを評価した。
B 当選考委員会では、事業の実施に際して「都市大阪創生研究会 IKINA水辺チーム」のみならず、地元市民協議会である「川を生かしたまちづくり協議会」などと共同して、「リバーカフェ実行委員会」を結成して市民参加型で実施したこと、さらには約130人ものボランティアの協力を得て実施したことを高く評価した。このことから、今回の関西まちづくり賞の直接の授賞対象は、申請者である「都市大阪創生研究会 IKINA水辺チーム」ではあるが、当委員会としては、事業に関わった地元市民や、ボランティアとして参加された市民も含めた広義の授賞対象とみなしているところである。

3.選考に関連して(考察及び問題提起)
 なお、今回の選考の講評は、以上のとおりであるが、今回の事業がまちづくりという点で、将来への示唆に富んだものであることから、これを題材に、社団法人日本都市計画学会関西支部「関西まちづくり賞選考委員会」としての考察及び問題提起を、次のとおり行う。
 まず、まちづくりは実践に裏打ちされた社会的技術であることからも、今回のような「社会実験などのソフトの取組み」についての、評価方法を確立することが必要である。
今回の選考においては、先述したように「最初に実施した」という事項を、奨励的な意味合いも含めてプラス要素として積極的に評価することとしたが、今後ともまちづくりにおけるソフトの取組みの重要性が増すにつれて、「最初に実施した取組み」と、「先行事例を参考に、本格的取組みへと結びつけたもの」との評価のバランスについては、今後、実際事例による評価の積み重ねが必要である。
 次に、当社会実験に関係したこととしては、「水上利用」のルール化を早急に確立する必要がある。今回は、社会実験であることから試験的運用としての水上カフェを一地点の1箇所で行っているが、今後、このような水上利用を、「どのような形態で進めていくのか」、「商業利用と公共利用のバランスをとるべきではないか」、「一地点で何箇所も水上利用を行うと景観上の問題が発生するのではないか」、「市民参加をベースとすべきではないか」など、整理・検討すべき内容は数多くある。
行政など関係者は、市民意見などを含めて、水上利用についての社会的合意を見出すべきである。
 また、今回の実験は、河川法を始めとする現行の法律の範囲内で、合法的に実施しているところではあるが、本来、河川法などは、市民の生命、財産の安全確保を基本としつつ、市民の豊かな暮らしにも寄与すべきものであり、現行の河川の関係法令が、市民の満足の阻害要因となっているのであれば、法令自体改正されるべきである。
 むしろ、大阪が「水の都」として、真の意味で再生を果たすためには、河川本体の管理と沿川のまちづくり(土地利用のマネジメントなど)とが一体に取り扱える、「都市河川」新法の制定など、本質的で先取的発想を追求すべきであり、それに向けた力強い社会運動と、取り組みも必要と考えるところである。

4.表彰
 これらの表彰及び受賞業績のプレゼンテーションは、2004年4月20日(火)に大阪市立難波市民学習センター(OCATビル4階)において、日本都市計画学会関西支部2004年度総会に引き続き行われました。

                                2003年度  関西まちづくり賞選考委員会 
                                             委員長     藤田 健二 (大阪府)