レガッタによる兵庫運河の再生とまちづくり

推薦者 (財)神戸市開発管理事業団 曽家 末晴

 兵庫運河は、海難事故の多い和田岬沖を航行せずにすむようにと、25年の歳月をかけて明治32年に完成した日本最大級の運河である。近年、運河としての必要性は低下し、周辺の工場への船舶輸送や貯木場として使われてきていたが、今ではそれらの必要性も無くなった。また運河に点在する物揚げ場は、その機能から手摺の無い岸壁であるため、水難事故にあう子供も多く「危険な場所」として子供が近づく事は禁止されていた。加えて、プレジャーボートの不法係留の増加、ゴミの投棄や不法駐車など、周辺地域住民にとって「近寄り難い」場所となっていることが問題であった。

浜山レガッタコースの位置

 こういった中で、運河の活性化が行政と地域の共通課題となり、平成15年度に神戸市が、兵庫運河に関して広く市民から活性化提案の公募を行い、神戸市漕艇連盟(以下、市漕連という)の「兵庫運河を市民の親水空間として再生し、市民レガッタの開催と地域スポーツクラブを設立する提案」が入選した。
 神戸市兵庫区役所は、その提案について地域の青年会から合意を得、市漕連と連携して実現に向け、区役所が取り組みの窓口となり、行政の内部調整を行う一方、地域住民にボートの周知・普及活動を始めた。

整備前の兵庫運河にはゴミの投棄が目立つ レガッタコースが整備され見違えるような兵庫運河

 提案の具体化に向けて、本物のボートを運河に浮かべての試乗会や親子ボート教室、小学生を対象としたエルゴメーター大会(トレーニング器具を用いた体験型ゲーム) 、ボート競技が主題の映画「がんばっていきまっしょい」の上映会の開催などを行った。また、学生のボート部を呼び、運河での練習風景によりボートに対する関心を高めてもらう企画も実施した。
 ボート体験をした地域の住民らは、ボートの楽しさと水面から見る風景のすばらしさに、あらためて地域財産としての兵庫運河を認識するようになった。

 運河を管理する神戸市みなと総局も「みなと神戸−いきいきプラン」(平成17年2月)の中で、運河の用途を産業から親水空間に転換を図る方針を打ち出し、スポーツの場と位置付けることで運河再生の方向が一気に加速され、長年の懸案であった運河に放置された貯木の撤去、岸壁への手摺の設置により、市民が安全に運河に近寄ることができるように整備する事とした。そして平成17年7月にその完成を記念するレガッタ大会の開催が決定された。
 地域共通のキーワードであった「運河の活性化」に向けた準備への取り組みは、ほとんど全ての作業を地域の婦人会・自治会・PTA・漁協・近隣企業など多くの地域団体のボランティアで対応し、大会で使用する艇は、各地の漕艇関係団体から老朽化した艇を譲り受け、海上自衛隊員らの協力も得て修理・再生し、大会の告知・資料作成・大会要綱作成から当日の会場設営等、地域ぐるみの活動として広がった。


 兵庫運河で初のレガッタ大会は、平成17年7月16〜18日の3日間開催され、兵庫運河に多くの市民の注目を集め、運河でレガッタができた喜びを「運河の再生」として感じてもらえた。
 大会後、近隣企業や学校等でもボート競技への意識が高まり、休日に小学生達のボート練習の声が響くようになり、地域に密着した組織作りや、レガッタ活動の底辺を広げて競技スタッフも含めたパートナーを増やし、さらに広範な市民の受け入れ体制が必要なことなどの課題も認識されることとなった。

 第2回大会開催に向けた主な取り組みには以下のような特徴がある。
 @ 実行委員会が、広範に多くの競技団体等の協力を受け、相互のネットワークが拡がった。
 A 実行委員会を地域主体に運河を囲む3小学校区の総合型地域スポーツクラブとして構成し、参加者の拡がりを目指した。その結果、小学生の参加者が増え、親も含めた参加者の拡大につなげた。
 B 初心者から競技者までの練習用の艇を確保し、初心者対応のクラブ(キャナルローイングクラブ)と競技者志向のクラブ(はちのすクラブ)を住み分け、幅広い層に対応した。
 C ボート部のある学校に練習場所を提供して相互協力を図り、市内高校ボート部が身近な場所で練習可能となり、彼らのレベルアップにつながったと同時に大会時のスタッフとして協力も得られた。
 D 競技運営スタッフや市民インストラクターの確保に向けた活動を行ない、大会時や練習会において、高校・大学・社会人などのボート関係団体の応援に加え、当地で育った市民インストラクターによるスタッフの増員が図られた。
 E ホームページを作成し、広く情報発信したことで活動内容のPRが可能となり、市内外からの利用者や大会参加者が増加した。


 「第2回兵庫キャナルレガッタ」は平成18年8月に開催された。
 地域団体で構成する実行委員会が主導し、複数の競技団体や多くのパートナーからスタッフとしての応援や協力を得、地元企業も空倉庫(約350u)を艇庫として無償提供したり、倉庫の外壁に壁画を描く等の景観演出でも協力が得られた。大会は、これら多くの関係者や市民の協働と参画を得て大成功に終り、運河と地域活性化へのステップとなった。


 今後、継続的に活動していくために、日常の練習のための市民インストラクターの養成や大会運営スタッフの充実などの更なるパートナー作り、大会開催経費の確保、など多くの課題も残されている。地域主体の活動に対して競技団体・行政の支援協力や維持しながら課題を克服していく取り組みが期待されている。
 これら実行委員会の活動は、ボート関係者にも広く認知されることとなり、兵庫運河のコースが(社)日本ボート協会による日本初の短水路公認コースとしての認定が検討されている。



 この活動は、運河の活性化策としてのレガッタ開催の提案をきっかけとして、地域が自ら組織を作り、民間レベルの競技団体や外部組織などの協力を得て活動を広げ、実行委員会・行政・競技団体がそれぞれの得意分野を分担することで「協働と参画」による地域の活性化を実現させたものである。
 これまでの高齢者が中心のまちづくりから、今回は、今後の地域をになう若い世代が中心となって、ボート競技というスポーツ活動を楽しみながら、外部からの競技者などの受入れ体制を広げ、新たな来訪者は周辺へ賑わいを提供するなど、運河周辺の活性化に向けた地域団体による、地域を超えた活動として更に広がっている。


( キャナルレガッタ神戸のHPアドレス  http://www.kcc.zaq.ne.jp/canal/ )