生活費や教育費、事業を続けるための運転資金などがない場合、銀行融資やカードローンでお金を借りることを考えるケースも多いでしょう。
しかし、銀行融資や消費者金融カードローンは安定した収入がなければ申し込みができません。
また、消費者金融カードローンなどの借り入れには「利息」がかかり、これが返済時に大きな負担となってきます。
失業して収入がない、給料が減ってしまい子どもの入学金が足りないなどといった場合、国からお金を借りることができます。
国からの公的融資は低金利であったり無利息であったり、返済期間に余裕があったりして、返済負担も軽くすることが可能です。誰もが借りられるとは限りませんが、検討してみるとよいでしょう。
ここでは、国からお金を借りる制度として、生活福祉資金貸付制度、求職者支援資金融資、母子父子寡婦福祉資金貸付金、国の教育ローンについて紹介します。
要件に合えば生活や就業に必要なお金を国から借りることができる
収入がなくなってしまった、仕事をしたくても事情があってできないなど、生活ができなくなってしまったり、子どもを学校に進学させるためのお金がなかったりする場合、国からお金を借りることができます。
国からお金を借りる方法には生活福祉資金貸付制度や求職者支援資金融資など、複数の方法があります。ただし、国からお金を借りるのは誰でもできるわけではありません。それぞれの融資には条件や対象があります。
国からお金を借りる方法として主な融資制度には、次のようなものがあります。
融資制度の種類 | 対象 |
---|---|
生活福祉資金貸付制度 | 低所得者、障害者、高齢者 |
求職者支援資金融資 | ハローワークの職業訓練受講給付金の支給が決まっている方 |
母子父子寡婦福祉資金貸付金 | 20歳未満の子どもを養育するひとり親・寡婦 |
国の教育ローン | 融資対象の学校に入学・在学する子どもの保護者で決められた世帯年収以内の方 |
生活福祉資金貸付制度は生活費や教育支援金などを国から借りられる
全国社会福祉協議会が窓口となる生活福祉資金貸付制度は、生活に困窮している人を対象に、生活費や事業継続資金、教育を受けるための就業資金などを借りられる制度です。
生活福祉資金には、総合支援資金、福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金の4種類があります。
種類 | 用途 |
---|---|
総合支援資金 | 生活費、住宅を借りる費用、転職や就職のために必要な知識やスキルを習得する費用、公共料金など |
福祉資金 | 福祉用具の購入、介護サービスを受ける費用、ケガや病気の療養中の生活費、災害を受けた場合の費用、冠婚葬祭費、緊急に生活が困窮した場合の費用など |
教育支援資金 | 高等学校、大学、高等専門学校への就学費用 |
不動産担保型生活資金 | 生活資金(高齢者に対して居住用不動産を担保に貸付) |
生活福祉資金は生活困窮者や高齢者、障害者をサポートする資金で、無利子もしくは1.5%(不動産担保型生活資金は3%)で国からお金を借りることができます。
原則、連帯保証人を立てる必要がありますが、立てられない場合でもお金を借りることは可能です。
求職者支援資金融資は職業訓練をしながら国からお金を借りることができる
ハローワークは仕事を紹介するだけでなく、就職するために必要なスキルを身につけるための職業訓練を受講することができます。その際、失業保険を受け取ることができれば生活費にすることができ、勉強に集中できます。
しかし、自営業や失業保険を受け取る条件を満たしていない場合、失業保険を受け取ることができません。そういった方のためにあるのが、求職者支援制度です。求職者支援制度は職業訓練や職業訓練受講給付金などよる生活支援を行う制度です。
ただし、給付金を受け取っても生活費が不足することもあり、その場合、国からお金を借りることができるのです。それが、求職者支援資金融資です。
労働金庫では、金融機関としての審査を行いますので、審査の結果、貸付を受けられないこともあります。 あらかじめ、ご了承ください。
求職者支援資金融資の概要は以下の通りです。
貸付額 | 月額5万円または10万円まで×受講予定訓練月の数 |
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貸付方法 | 口座への一括振込 |
金利 | 3.0% | 申請窓口 | お住まいの地域のハローワーク |
訓練を途中で辞めてしまった場合、1ヵ月以内にハローワークに届け出て契約変更の手続きを行いましょう。1ヵ月を過ぎてしまうと残高を全額一括で返済しなければなりません。
ひとり親の子育てを支援する母子父子寡婦福祉資金貸付金
配偶者がいない状態で子育てをするのは経済的にも大変なことです。 20歳未満の子どもを扶養しているひとり親、寡婦が国からお金を借りる融資制度が、母子父子寡婦福祉資金貸付金です。
貸付金の種類は以下の12種類。子どもの修学資金や医療のための資金、結婚資金など多岐にわたります。
種類 | 用途 |
---|---|
事業開始資金 | 事業を始める際に必要な設備や材料などを購入する資金 |
事業継続資金 | 現在の事業を継続するための運転資金 |
修学資金 | 高等学校、高等専門学校、短期大学、大学、大学院、専修学校の授業料、書籍代、交通費など |
技能習得資金 | 事業を始めたり、就職したりする際に必要な知識や技術を習得するための資金 |
修業資金 | 事業を始めたり、就職したりするために必要なスキル習得のための資金 |
就職支度資金 | 就職のために必要な衣服や靴、自動車などの購入資金 |
医療介護資金 | 医療や介護を受けるための資金 |
生活資金 | 知識・技術を習得している間や病気の治療などをしている間などに必要な生活資金 |
住宅資金 | 住宅の建設、購入、改築などの資金 |
転宅資金 | 住宅を借りる際に必要な資金 |
就学支度資金 | 就学や修業に必要な衣服や靴などを買う資金 |
結婚資金 | 結婚をする際に必要な資金 |
母子父子寡婦福祉資金貸付金では、無利子や1%といった低利子で国からお金を借りることができます。
国の教育ローンは入学金やパソコン代など用途が幅広い
子どもの教育にはお金がかかります。そのため学資保険などに加入しているケースも多いでしょう。銀行などの金融機関でも教育ローンを提供していますが、国からお金を借りることもできます。
国の教育ローンは子ども一人につき、350万円(条件によては450万円)まで借りることができる教育ローンです。
対象となる教育施設や借りたお金の使い道も幅広いのがメリット。高等学校や大学などをはじめ、専修学校や予備校、職業能力開発施設、語学学校など海外の教育施設が対象です。
ただし、国からお金を借りる場合世帯年収が以下の金額以内でなければなりません。
子どもの数 | 世帯年収(所得)の上限額 |
---|---|
1人 | 790万円(600万円)※条件によっては990万円(790万円)まで |
2人 | 890万円(690万円※条件によっては990万円(790万円)まで) |
3人 | 990万円(790万円) |
4人 | 1,090万円(890万円) |
5人 | 1,190万円(990万円) |
子どもが2人までの場合、勤続年数が3年未満、単身赴任、海外留学資金など、条件によっては上限金額が990万円になります。
金利は2.25%と固定金利なので、返済計画が立てやすいでしょう。また、交通遺児家庭や母子・父子家庭、世帯年収が200万円以内などの世帯は、より低い金利でお金を借りることができます。
国からお金を借りるメリットはカードローンや民間融資より返済負担が軽いこと
お金を借りる方法には、カードローンを契約したり銀行などの金融機関から借り入れをしたりする方法があります。国からお金を借りるのと、カードローンや民間融資を利用するのとでは、さまざまな違いがあります。
国からお金を借りることのメリットや注意点について把握しておきましょう。
国からお金を借りる制度は生活困窮者のセーフティネット
カードローンや銀行からの融資は安定した収入があることが前提です。しかし、国からお金を借りる場合、無職でも借りられます。
生活福祉資金貸付制度や母子父子寡婦福祉資金貸付金など、国からお金を借りる制度は生活困窮者のためのセーフティネットです。仕事ができない、就職先が見つからないといった人に対してお金を貸す制度なので、むしろ安定した収入がある場合、年収にもよりますが国からお金を借りられない場合もあります。
低所得者世帯(市町村民税非課税程度)で、失業や収入の減少などによって生活に困窮していること
低利子もしくは無利子での貸付が多いので返済負担が軽い
国からお金を借りる際、利息は0%もしくは1~3%程度です。消費者金融カードローンや銀行カードローンでお金を借りるとすると、14%~18%程度の利息がつくことが多いです。
プロミス | 4.5%~17.8% |
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レイク | 4.5%~18.0% |
楽天銀行スーパーローン | 1.9%~14.5% |
消費者金融や銀行のカードローンと比べると、国からお金を借りる制度は返済の負担を軽くしているのが特徴です。
返済期間が長いので精神的にも余裕を持って返済ができる
国からの融資は返済期間が長いことが多く、精神的にも余裕を持って返済することができます。
貸付資金の種類 | 貸付限度額 | 償還期限 |
---|---|---|
総合支援資金(一時生活再建費) | 60万円以内 | 据置期間経過後10年以内 |
教育支援資金(就学支度費) | 50万円以内 | 据置期間経過後20年以内 |
福祉資金(福祉費) | 580万円以内 | 据置期間経過後20年以内 |
返済期間が長いと支払う利息も増えるため、総返済額が大きくなってしまいますが、国から借りるお金は無利子であることも多いため、返済期間が長くても利息が増えることがありません。
そうは言っても借り入れは早めに返済した方がスッキリするものです。生活の立て直しができたら、少しでも早めに返済をすることを考えましょう。
据置期間があるので借りてからすぐに返済をしなくてすむ
国からお金を借りる制度は、据置期間があることが多いです。据置期間というのは、元金は返済せずに利息だけを払う期間のことです。
貸付資金の種類 | 据置期間 |
---|---|
総合支援資金(生活支援費) | 最終貸付日から6月以内 |
福祉資金(福祉費) | 貸付けの日から6月以内 |
福祉資金(緊急小口資金) | 貸付けの日から2月以内 |
お金を借りたばかりのときは、返済が苦しい場合もあるでしょう。就職をして収入が安定すれば、返済もしやすくなります。据置期間があれば、その期間は利息だけを払えばすむので、返済の負担も軽減されます。
国からお金を借りるには審査があるため誰でも借りられるわけではない
国からお金を借りる際には審査があります。例えば生活福祉資金の場合、市区町村の社会福祉協議会に申し込んだ後、書類の確認と貸付の審査があり、適していないということになれば国からお金を借りることはできません。
借入申込者よりご提出いただいた申請書類等をもとに、市区町村社会福祉協議会及び都道府県社会福祉協議会において申込内容の確認と貸付の審査を行い、貸付決定通知書または不承認通知書を送付します。
国からの融資は生活を立て直すためのサポートとしていることが多く、審査通過のためには就職活動をしているなどといった、返済の意思が大切です。
申し込みからすぐにお金を借りられるわけではない
国からお金を借りる際、消費者金融カードローンのように最短即日で借りられるということはありません。
申請から送金まで原則1か月以上かかります。
引用元:中野区社会福祉協議会 福祉資金
各地域の社会福祉協議会などによって、また申請の込み具合などによっても申請からお金を借りられるまでの日数は異なりますが、受付をした日を基準に数週間~1ヵ月程度かかることが多いようです。
申請書類に不備などがあれば受付してもらえず、送金はさらに遅くなります。書類は正確に不備のないようそろえるようにしましょう。
ただし、緊急小口資金に関しては、原則5~7営業日など他の資金よりも短い期間で送金される可能性も高いです。
申請から送金まで原則5営業日かかります。
生活福祉資金の特例貸付を行っていた際は、送金までに1週間程度かかるケースも。
県社協受付日を含めて 7 営業日目(土日祝・年末年始は営業日外です)
また、国の教育ローンは審査結果が出るまで10日前後、口座への振り込みに10日前後かかります。特に入学シーズンは申し込みが多くなるため、お金が振り込まれるまでさらに時間がかかります。
国からお金を借りるには書類を申請してから書類のチェック、さらに審査があります。お金を借りられるまでは1ヵ月以上かかることもあると認識しておきましょう。
「国からお金を借りる」に関連するよくある疑問
「国からお金を借りる」に関連するよくある疑問を集めてみました。参考になさってください。
Q 国からお金を借りる際に必要な書類は何ですか?
A 申し込む制度によって詳細は異なりますが、原則、申請書のほか住民票や世帯収入がわかる書類、就職活動をしていることを証明できる書類などです。制度によって用意する書類が異なるので、借入をする窓口で確認しましょう。
Q 国からお金を借りる際、いつ振り込まれますか?
A 資金の種類にもよりますが、1週間~1ヵ月程度です。地域や申請の込み具合などによっては1ヵ月以上かかることもあります。申請をするなら早めに準備をしましょう。
Q 国からお金を借りる場合、どこで申し込めばよいですか?
A 生活福祉資金の貸付の窓口は社会福祉協議会、国の教育ローンは日本政策金融公庫の各支店、母子父子寡婦福祉資金貸付金は市役所などの自治体、求職者支援資金融資はハローワークで申請できます。連絡先などがわからない場合は、お住まいの市区町村の役所に問い合わせてみましょう。
Q 国の教育ローンは学生でも申し込みできますか?
A 申込者が成人年齢に達していて、安定した収入があり、独立していれば学生でも申し込みができます。ただし、学業に専念して仕事ができなくなる場合は、家族などが申し込む必要があります。
国からお金を借りるには審査があるがまずは相談してみる
国からお金を借りる主な制度には、生活福祉資金貸付制度や母子父子寡婦福祉資金貸付金、求職者支援資金融資、また教育にかかるお金の融資に特化した国の教育ローンなどがあります。
国からの融資は低金利や無利子であることが多く、据置期間があったり、返済期間が長くなっていたりして、返済負担も軽いのがメリットです。
資金によって対象者が決まっていて審査があり、誰でも借りられるわけではありませんが生活に困っていたり、子どもの教育費が負担になってしまったりするなら、住んでいる地域の自治体に相談をしてみるとよいでしょう。